【特集記事ピックアップ】女子バレーボール日本代表 関 菜々巳(東レアローズ) パリを目指す主力の覚悟

6月11日から始まるバレーボールネーションズリーグ(VNL)2024 予選ラウンド第3週福岡大会。
パリ五輪出場を賭けた最終決戦で代表復帰を果たした関 菜々巳選手。

エールスポーツ千葉 2024.1月 Vol.42 より インタビュー記事を掲載します

「勝ちたい」から「絶対に勝つ」へ
―パリ五輪への決意と覚悟―
関 菜々巳(東レアローズ)

来年のパリ五輪出場を目指すバレーボール女子日本代表の選手たちは、所属チームで更なる飛躍を誓い、国内Vリーグに臨んでいる。
惜敗した9月の五輪予選(FIVBワールドカップ)で主力セッターとして攻撃のタクトを振った関菜々巳(東レアローズ)に、来年へ向けた意気込みを聞いた。


トルコとブラジルにあと一歩のところで勝ちきれなかったパリ五輪予選。
日本代表は来年6月までの世界ランキングでの出場を目指すことになる。
敗戦で見えたこと、自分の現在地とテーマをどう捉えているのか。

 「大会が終わって真鍋(政義)監督からは、トルコやプラジルの選手とはワンプレーに賭ける気持ちに差があった、と言われました。
自分たちだって勝ちたい、と強い気持ちでやってはいましたが、彼女たちは『勝ちたい』ではなく『勝たなきゃならない』という気迫が勝っていたんだと思います。
プロ選手ばかりで、負けたら自分の価値が暴落してしまう。
私たちの覚悟はそこまでのレベルに達していなかったんだ、と身に染みて感じました。

これまでの自分は、『アタッカーが打ちやすい球を上げなきゃ』とか『コンビを合わせなきゃ』とか、自分の技量や気持ちをアップさせることばかりに執心し過ぎることが多かった。
相手のブロックの動きなんかも、調子の良い時は目に入るのですが、自分たちが劣勢の時には見る余裕がなくなってしまいがちでした。

ところが最近は、流れが悪い時でも相手の前衛の動きを見ながら、裏をかいた攻撃を繰り出せるようになりました。
トルコやブラジルとの試合でも、苦しい時にミドルからのバックアタックを選択して相手の流れを切らすこともできた。自分なりに収穫もあった大会でした」

若いチームに代表から持ち帰った経験を注ぎ込む

船橋市出身で、県立柏井高校時代は春高バレー出場や年代別代表に選ばれるなど活躍したが、本当は大学に進学するつもりだったとか。将来Vリーグまでバレーボールを続けるつもりはなかったそうだ。

 「練習会にも行ったことがなかった東レから誘われたんですが、高校時代の恩師(國安鉄太郎元監督)から『同じ歳の選手たちが何人もVリーグに行く。将来代表選手になって有名になった時に、きっと悔しい思いするぞ』と。
今思えば、監督は私をけしかけたんだと思います。まんまと、はまってしまって(笑)。
でも、あの言葉があったから今がある。感謝しきりです。

高校時代に、『努力する、頑張る、なんてそう簡単なことではないんだぞ』と繰り返し諭され続け、自分でも本当によく練習したと思います。
県立高校なので、中学時代に県大会に行ったことがない選手も多くいたんですが、誰一人途中で辞めずに全員最後まで一緒に戦ってくれました。
最後の年は主将として、そんな友人たちの分まで背負ってやり続けられた。
私の今を支える尊い財産です」

「勝たなきゃいけない覚悟」で、コートに立つつもりだ (提供/日本バレーボール協会)

自分の上げるトスに完璧さを求めるあまり『考え過ぎるのが悪い癖』と自らを語る。
それでも最近、『トスなんてブレても良いのよ。貴女のトスなら打ってあげるわ、と思わせるような人柄の方が大事』と言ってくれる先輩がいて、自分の視界が明るく開けた感じがしたそうだ。

 「以前の私は、相手の流れを自分のトスワークで断ち切るようなプレーが少なかったかもしれない。ミスを恐れて大事になり過ぎるあまり、単調なトス回しになって相手に読まれることも。
ところが最近は、相手の動きも見ながら劣勢の時でも意外な攻撃パターンを繰り出すことができるようになって、成長している実感があるんです。

(五輪出場権がかかる)来年5月に始まるネーションズリーグに出場できれば、是非とも私のトスワークに注目して観ていただければ嬉しいです。
トルコやブラジルに負けた悔しさ、私たちに足りなかったことは痛いほどわかった。
『あの敗戦があったから勝てた』と後で言えるような1年にします。応援よろしくお願いします」

関 菜々巳(せき・ななみ)
1999年船橋市出身。小学生の時に姉の影響でバレーボールを始める。
市立行田中から県立柏井高校に進み、2年生でアジアジュニア選手権の日本代表に選ばれるなど早くから注目された。
卒業後、Vリーグの東レアローズに入団。
2年目のシーズンから正セッターとして出場、この年のリーグ準優勝に貢献し最優秀新人賞にも輝いた。
2019年に日本代表初選出。

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