明日を拓け! 持田早智
夢の舞台に向かって、日本中のアスリートたちが走り出している。
千葉県でも多くの若き才能が奮闘中だ。
「その日」のために努力を重ねる彼らに心からエールをおくろう。
競泳 持田早智(ルネサンス幕張/千葉商科大学付属高校1年) 私の一番ほしいものは、泳ぎ続けたその先にあるんです。
続けていたら世界が見えた
2015年4月9日、東京辰巳国際水泳場で行われた第回日本選手権水泳競技大会の女子200メートル自由形決勝で、持田早智は銀メダルを獲得した。高校生になりたての歳、日本選手権で1分秒のベストタイムを出したのだ。この結果、持田は8月の世界水泳選手権のリレーメンバーとなる。初の代表入りであり、世界トップレベルの大会への初切符だった。「ここぞ」という時に結果を出せる大器に、世間は一躍注目した。
水泳を始めたのは6歳の頃。兄や幼稚園の仲よしがやっていたからという理由の習い事だった。小学3年で関西から千葉市に越してきたが、新居の近くにもスイミングスクールがあった。「両親がその場所を選んだのかも。だから続なきゃいけないのかなと思って」スクールに通ったと振り返るが、水泳を続けさせた両親は、娘の潜在能力を見抜いていたと言える。
中学に入るとメキメキと力をつけ、大きなレースの出場種目は自由形の100メートル・200メートルに絞られてくる。中学3年の昨年度は、全国中学校体育大会で両種目を優勝(200は中学生新記録)、長崎国体(少年女子)では、出場したメートル、100メートル、400メートルフリーリレー、400メートルメドレーリレーの全種目で優勝し、100メートルでは中学生新記録をマークした。代表入りの素地は明らかだった。
練習、大会、練習、大会
代表レベルの仲間入りをした今年は、世界大会以外にもジャパンオープン、JOCジュニアオリンピックカップ、国体と試合中心の日々だ。インターハイは期待を裏切らない二冠。100メートルは大会新だった。
小学6年から持田を指導する西崎勇コーチ(ルネサンス幕張)は、小さい頃からアスリートの闘争心を持ち合わせていた選手だと語る。「とにかく頑張れる子。負けず嫌い。性格もサバサバしていて自分の意見をはっきり言う。そこは長所なので型にはめないようにしてやりたい」
日常の練習は、陸上トレーニング+スイムで平日は3時間、土曜は2回に分けた5時間、日曜も3時間で、オフは月曜だけ。朝に練習する時期もある。
「練習はきついです。泳ぎたくなくなる時もあります。でも、ここまでやってきたからにはオリンピックに絶対に出たい。東京オリンピックで結果を出してからやめます。東京オリンピックで結果を出せなかったらその次のオリンピックまで頑張ります」
一息に言うとパッとコーチを見て、頬を緩めた。西崎コーチは「お!?」とおどけて受け止める。この言葉とやりとりは、持田とコーチの絆の深さと、16歳らしい葛藤を逆に際立たせた。大きな目標のためには厳しい練習を積み重ねるしかないことは百も承知。「水泳大好き、なんて言わせないで」と先手を打たれた。
一番速いクロールで一番を目指す
クロールは、「一番速く泳げる種目」なのが魅力。ロシア・カザフスタンでの世界選手権は、200メートル自由形と800メートルフリーリレーにエントリーした。リレーではリオデジャネイロ五輪出場権獲得に貢献し、個人は位というタイムだった。「去年は世界ランキングだと123番くらい。今なら100番くらいに上がれているだろうとは思っていたけど、レースで20位になったのはいい手応えでした」
意識は日本ランキングから世界ランキングへと変わった。
「持田はキックがいい。リズムと力強さがあります。体をキックで浮かすようにして泳げるからボディポジションが高い。その分水の抵抗も減るので速いんです」(西崎コーチ)。
課題はストロークの効率。1回のストロークでどれだけ前に進めるか、水をとらえる精度を上げていくのだ。
ホッとする時間は、仲間とのおしゃべりと食事の時間。「白ご飯が好き」と食いしん坊を自認し、間食もストレス解消だ。太りすぎないようにと間食を抜いて練習を頑張りすぎ、低血糖で倒れたこともある。以来、自己管理にも気をつかう。
トップアスリートへの脱皮は始まった。型にはまらず、食べたいだけ食べ、言いたいことを言う持田こそ応援したい。彼女が「ここまでやった」と納得してレースに臨む時、その真摯さが観る人に伝わる、そんな選手だと思うから。